生命保険は有効に活用することで、非常に効果的な相続対策になります。「保険は入っているけれど、内容がわからない。忘れた」という方も多いかもしれませんが、相続財産を把握する時に、契約者、保険期間、保険金、受取人など保険証券をチェックしておきましょう。2015年1月より相続税の遺産に係わる基礎控除額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」となりました。このため、相続税がかかる方が、相続税の基礎控除が変更される前は死亡者の約4%ほどだったのに対し、8.1%(2016年データ)となっています。首都圏では、12%程度となっています。生命保険では契約形態によりかかる税金が異なりますが、うまく使えば預金でおいておくよりもお得になります。
被相続人が被保険者、保険料負担者である生命保険契約に基づき、相続人が受け取った死亡保険金や死亡退職金については、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、そのうち法定相続人一人あたり500万円が非課税財産となります。この場合の法定相続人の人数には相続放棄した人も含めて計算します。
生命保険金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 |
預貯金には全額課税されますが、生命保険金の非課税枠を使うことで相続税を軽減することができます。注意点としては、年齢を重ねて保険に加入した場合には、ある程度の年齢を重ねると、受取保険金よりも支払保険料の方が多くなる逆転現象がおこってしまいます。このため、時期を見て保険料の払い込みをストップして払済保険にすることも一案かと思います。
生命保険への加入は個人であれば納税資金の確保、法人であれば先代のご逝去に伴う当面の運転資金の確保や死亡退職金の原資づくりの方法として有効です。生命保険金額が納付すべき相続税額以上であれば、生命保険金以外の財産はまるまる残ります。また、会社契約の生命保険(契約者・受取人=会社、被保険者=社長等)であれば原則として受取保険金(収益)が退職金(費用)と相殺され、会社の損益への影響が少なく、被相続人に退職金を払う原資とすることができます。
相続人が保険料を負担する資力がなかったり、相続財産を減らしたい場合に、贈与税の基礎控除(110万円)を利用して、被相続人が生前に保険料分の現金を相続人に贈与しておく方法があります。契約者・保険金受取人=贈与を受ける相続人、被保険者=被相続人とします。被相続人の死亡時に受け取った生命保険金は相続財産に加算されず、相続人の一時所得として所得税、住民税が課税されます。相続税の実効税率が高い場合や配偶者がいないケースでは、この方法ほうが税負担が少ない場合もあります。ただし、被相続人が年齢を重ねて被保険者となった場合には、受取保険金よりも支払保険料のほうが多くなる逆転現象が起きるため、ある程度経過したら、保険料の相続人への贈与と保険料の払い込みをストップして払済保険へ変更するのも一案かと思います。
課税される一時所得の金額 | (保険金・配当金等その年中の総収入金額ー払込保険料ー50万円)×2分の1 |
保険に加入できない高齢者や持病を持っている人でも相続人を被保険者とする保険の契約者となることは可能です。この場合、契約者(被相続人)が死亡した時には、「生命保険契約に関する権利」が相続財産となります。これは「解約返戻金相当額」で評価します。
生命保険契約に関する権利の評価 | 解約返戻金相当額 |
自宅や事業用資産など遺産が分割が困難な場合には、代償分割という方法を検討されるとよいでしょう。自宅や事業用資産を取得する長男などが他の相続人に代償としての支払いに充てるため、保険料贈与をしながら契約者=継ぐ人、被保険者=被相続人、受取人=継ぐ人という契約形態で保険金を取得できるようにしておけばよいでしょう。
自宅や事業用資産を継ぐ人に保険金が下りるように契約しておくと | 代償交付金の原資となる |