建設業の許可を取得した者は、元請でも、下請でも、すべての工事現場に、施工の技術上の管理のため、主任技術者もしくは監理技術者を置かなければならないというとが、建設業法で決められています。

建設現場に施工の技術上の責任者である、主任技術者や監理技術者を置くことで、施工技術の確保を図り、

●重機の転倒やガス管などの埋設物の破損といった公衆災害や建設工事に係る作業員の生命や身体に対する労働災害を防止する 

●注文者と請負人の間の建設工事をめぐる苦情・トラブルを未然に防止する

●工事をより合理的に施工し、質的にも向上する ということが期待されています


これに対して、専任技術者は、建設業の許可や更新の条件として、各営業所に専属で配置が必須となっています。

専任技術者の主な業務としては、設計事務所などが作成した設計図書を精査し、建築資材、施工方法、施工計画案を検討し、施工上の問題があれば改善案を提案したり、建設業者として工事請負金額及び請負契約の内容を決定するための積算見積書、工事内訳書の作成を行うことです。

原則、専任技術者は、現場に配置できませんが、例外もあります。

今回はこちらの技術者の求められる役割や職務の違い、どういう人がなれるのか、また、専任技術者と主任技術者や監理技術者の兼任ができるのかなどを以下の動画で解説しました。

昨今工事費が上昇していることを踏まえ、2023年1/1から、特定建設業の許可が必要な請負金額や、主任技術者や監理技術者の専任を要する請負金額の下限が引き上げられていますが、こちらの動画は、法改正に対応しています。

1. 専任技術者の要件(一般建設業許可の場合)

専任技術者は、一般建設業許可の場合、以下の①~③のいずれかを満たすことが必要です。

①【大学や高校の指定学科卒業+実務経験】:許可を受けようとする建設業が係る建設工事に関し、大学(高専、旧専門含む)指定学科卒業後、許可を受けようとする業種について3年以上、高校(旧実業学校を含む)の場合、指定学科卒業後5年以上の実務経験

②【資格や検定】:許可を受けようとする建設業に関し、〇又は◎に該当する資格を有する者。(埼玉県建設業許可の手引き「表4」

③【実務経験】:許可を受けようとする建設業に係る工事に関し10年以上の実務経験を有する者。ただし、電気工事及び消防施設工事については、電気工事士法、消防法等により電気工事士免状及び消防設備士免状等の交付を受けた者でなければ、一定の工事に直接従事できません。

実務経験で専任技術者になろうとする場合、必ず経験を証明する書類(契約書、注文書、請書、入金がわかる通帳等)を大切に保管しておいてください。

2. 主任技術者又は監理技術者の配置

建設業の許可を取得した者は、すべての工事現場に主任技術者又は監理技術者を配置しなければなりません(建設業法第26条)。専任技術者は所属する営業所に常時勤務する者であるため、原則的には「主任技術者」や「監理技術者」にはなれません。ただし、「専任であることを要しない工事」であり、工事現場が営業所に近接して、常時連絡を取りうる体制にある場合は「主任技術者」「監理技術者」を兼ねることができます。

3. 主任技術者や監理技術者の現場専任

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、工事1件の請負代金の額が4000万円(建築一式工事の場合8000万円)以上に配置される監理技術者等は工事現場ごとに専任の者でなければなりません(建設業法第26条3項)。戸建ての個人住宅を除くほとんどすべての工事で、工事1件の請負代金の額が4000万円(建築一式工事の場合8000万円)以上のものについては、専任性が求められます。技術者が現場の掛け持ちをすることは専任性を欠くことになり、適正な施工管理や技術的指導が行われないままで施工されることが懸念されます。建設業法改正により、「技師補」の制度が設けられ、技師補の配置で監理技術者の現場兼任が可能となりました。また、主任技術者の配置については、鉄筋工事と型枠工事については、一定の条件の下、下位下請に主任技術者を配置しないことができるようになりました。