遺言執行者とは?

遺言執行者とは、遺言者が死亡した後に遺言の内容を実現する役割を担う者です。遺言執行者の定めは強制ではなく、一般的な遺言であれば指定がなくても問題はありません。ただし、遺贈(=遺言によって財産を渡すこと)の場合は、遺贈の履行を確実にするために、遺言執行者を指定するのが通常です。相続人の一人を遺言執行者と定めることもありますが、遺言執行者は専門的知識を要する上、金融機関や役所への平日日中の訪問が必要なので、遺言を作成する際に、法律職に依頼していた場合は、その法律職が遺言執行者として指定されていることが多いです。遺言執行者に関する2019年民法改正により、遺言執行者には「相続開始後すみやかに手続きを進められるだけの時間と知識が十分にある人」を選ぶことがより重要となりました(民法1013条2項より)

 特に相続トラブルなどもなく、財産の配分も相続人だけといった一般的なケースですと、遺言執行者が決まっていなくても不都合なことはないでしょう。しかし、相続人の誰かが財産の配分に納得しない可能性があるとか、遺言で寄付をする等の場合は、感情的にも手続き的にも遺言執行者を指定しておいた方がスムーズに相続手続きを終わらせられます。

遺言執行者の権限

◎遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)

◎遺言執行者がいる場合、遺贈を履行できるのは遺言執行者だけです(民法1012条2項)

◎遺産分割方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があり、その遺産が預貯金である場合には、遺言執行者はその預貯金の払い戻しの請求及びその預貯金に係る契約の解約の申し入れをすることが可能です(民法1014条2項、3項)

遺言執行者を選任するメリット

金融機関は、遺言書にて預貯金を相続する方以外の方に対しても署名、実印での押印、印鑑証明書の提出を求めます。しかしこれでは、以下の場合なかなか手続きがすすみません。

・相続人が多数おり、署名押印をもらうことに手間がかかる

・相続人が遠方におり、意思の疎通が難しい。

・海外在住のため日本で印鑑証明書が取れないため、在外公館で署名証明することになるが、その人の住んでいる近くに在外公館がない。

・相続人が兄弟のみであまり交流がないケースや、兄弟のうち亡くなった方がいて、甥姪が代襲相続人となっているケースで、日ごろから交流がない。甥姪が協力的ではない。

・○○銀行の預金は長男と長女で半分ずつにするという遺言に対して、次女は自分がその預金口座を相続できないことがわかっているので、署名押印を渋る。

➡このような場合、遺言執行者が選任されていれば、遺言執行者は相続開始後の手続きを単独で行う権限がありますので、スムーズに遺言を実現していくことができます。

遺言執行者の具体的な職務

遺言執行者の就任承諾⇒相続人に受諾した旨を通知⇒遺言執行のために必要な戸籍の収集や財産目録作成のための財産調査、金融機関手続き開始⇒遺言通りの分配⇒完了

遺言執行者の指定

◎遺言執行者の指定は遺言で行います(民法1006条1項)

◎遺言執行者がいない場合は、利害関係人が家庭裁判所にその選任を請求することができます(民法1010条)

遺言執行者の報酬

遺言執行者は無報酬で遺言執行業務を行うわけではありません。遺言の中に、遺言執行者の報酬に関して定めておくことも可能です。銀行が遺言執行者となっている場合、相続財産の1%~3%程度が報酬となるケースが多いようです。弁護士の場合は事務所ごとに異なるようですが、100万円前後としている事務所が多いようです。司法書士、行政書士の場合は、相続財産の1%前後、あるいは30万円程度となっているところが多いようです。遺言の中で報酬について定めがない場合、相続人との話し合いで定めますが、折り合いがつかなければ家庭裁判所に遺言執行者の報酬額を定めてもらうことができます(民法1018条)。宗像も遺言執行者として指定頂くことができます。遺言執行者の報酬は遺言内容により異なりますので、ご相談下さい。